声 浪 宏友 |
裏通りの小さな雑貨店 閉店間近 ぼくが帳簿をつけていると 店のほうが賑やかになった
こんな時刻に
中に 爽やかに弾む声がある
あの人であるわけがない
小鳥たちが思い思いに囀っているような
どっと 笑い声が爆発する
ぼくは 手が止まって
遠くで店員の声がこだまする
それっきり
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診療所で 中原道代 |
ここは町外れの診療所 込み合った待合室 私も長いすで順番を待っている 急に あーあー あーあー と可愛い声 思わず手元の本から目を上げた 若いママに抱かれた幼い子 小さな体いっぱいに出す声が 待合室に響きわたった 母親は立ち上がり 胸の子を大きく揺った 一生懸命お話してるんだね 私のつぶやきに彼女が少し笑った 老人が手を引かれてゆっくり通りすぎた かつて私が通った道 やがて私も通る道 目を閉じて自分を見つめている ゆったりとおだやかな時が流れる
外に出ると
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平等で対等 伊藤一路 |
友人はいつまでも友人だ なぜずっと友人でいられるのか それは平等であり対等だからだと思う ある瞬間助けたり助けられたり 与えたり与えられたりする事もあるけれど 根底でお互い平等で対等だからいつまでも友人で いられるのだと思う しかし本当は友人だけの話ではないはず 先輩と後輩、教師と生徒、親と子、旦那さんと奥さん 全員対等で平等じゃなければいけないと思う どちらかの意識が対等や平等でなくなった時その関係は歪む 僕は初めて親になった時自分に誓った 子供に対しても平等で対等であろうと 親になっても偉くなっちゃいけないと 実際の所偉くもないし
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風に舞う手紙 大場 惑 |
窓を開けると 遠くに広い海が見える 近くには積み木を並べたような町 色とりどりの屋根がひしめいている 窓際で 便箋に手紙を書く 何枚も 何枚も 手紙を書く 書き終えた便箋が 積み重なる
呼ばれたような気がして振り返る
視線を戻すと 書き終えた便箋が舞っている
手紙は 何処へ行くのだろう
町へ行くのか 海に浮かぶのか
誰かが 読んでくれるのか
何も分からないままに
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