雪の向こう 浪 宏友 |
もう戻ってはくれない人を 降り続く雪をすかして探している ふたりの季節はまたたくまに過ぎて 再び巡る春はない
山並みを遠くみながら
二両編成の気動車が遠い山すそを走る
短い手紙がとどいたあの日
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胸の奥の声 浪 宏友 |
君の声がする 胸の奥の はるかな世界から 君の呼ぶ声が聞える
裏切りつづけてきた日々
足跡はとっくに消えて
君の声は 細く 遠く
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つれづれ 中原章予 |
教会の帰り 車窓にうつる杉林 黄色く色づく杉の花 風にふかれて 真黄色の粉をふく 杉花粉 車中の老人 花粉症の悩み訴えおり 聞きつつ花粉症なき己が身ふりかえり 健康を下さった神仏父母に感謝 又新たに
立春とは名ばかりの大霜の朝
霜柱ガサガサふんで物干し台
日一日とあたたかさ増して春を感じ
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風花 中原道代 |
市街地に通じる跨線橋を車で走る うすぼんやりした日の光の中を 風にのってふわふわと雪が舞う まるでたんぽぽの綿毛のように ほら手元のフロントガラスに 歩く人の肩に舞い降りてすぐ消える雪 「風花だ」と主人が言った きれいだなあ 赤信号の間しばし見とれる ビルの向こうに目をやれば 山の上は吹雪で白くかすんでいる
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