詩誌「詩人散歩」(令和03年春号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  いのち              浪 宏友

父がいた
母がいた
そして わたしが生まれた

父母に 育てられ
世間に 育てられ
地球に 育てられ
宇宙に 育てられ

今 ここに わたしがいる

わたしのいのちは 父母のいのち
わたしのいのちは 世間のいのち
わたしのいのちは 地球のいのち
わたしのいのちは 宇宙のいのち

すべてのいのちは ひとつのいのち

わたしは
大きないのちの 端っこの
  そのまた端っこの 端っこの
小さなさざなみにすぎないけれど

それでも わたしは
大きないのちに生かされて
今 ここに 生きている

  一枚のはがき           中原道代

お正月
喪中のわが家のポストに一枚
可愛いはがきが入っていた

おじいちゃん おばあちゃん
おとしだま ありがとう
らんどせる かってくれて ありがとう

覚えたてのひらがなが並んでいる
一生懸命の跡が
はがき一面に溢れている
私たちに届いた
うれしい うれしい お年玉
この温もりをしっかり抱いて
朝日に向かって 合掌

ガラス越し
穏やかな光を浴びて
君子蘭の葉が
また 一枚 生れている

  完璧               伊藤一路

子供は完璧だ
子供は嘘がないから正直
子供は計算がないから直接的
子供は執着がないから前向き
子供は妬みがないから優しい
子供は恨みがないから穏やか
子供はプライドがないから明るい
子供は完璧だ
子供のいいところが成長した人のことを
大人と言うのではなかろうか
いつの間にか余計なことを学び
いらぬ欲に惑わされ ずる賢くなり
子供ではなくなってしまう
歳をとると子供に帰るというが
美しく子供に帰るには賢く生きないと
子供からしっかり学ぼう