詩誌「詩人散歩」(令和03年秋号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  無限階段              浪 宏友
階段を登る
一歩を踏み出すと
一段 現れる
また 一歩を踏み出すと
また 一段 現れる
まわりには
ミルク色の闇がたち込めている

いつ 登り始めたのか 分からない
どこまで登るのか 分からない
踏み出すと
そこに階段が現れる
立ち止まれば どこにも 階段などない

振り返れば
登ってきた階段が
  細長くのたうっている
その先端は
遠くに紛れている

気を取り直して 一歩を踏み出す
階段が 一段 現れる

いつまで 登り続けるのか
どこまで 登り続けるのか

また 一歩を踏み出せば
また 一段
階段が 現れる

  オンライン            中原道代

子供たちがオンラインで
かくれんぼう始めたよ
もういいよーと女の子
画面に可愛い顔がのぞいてる
テーブルの下?と男の子
ブッブー!
まんまちゃんのお部屋?
ピンポーン!
こんどはぼくたちの番だよー
画面のふたりが消えている
どこだ どこだ
私も仲間に入って
遠くのお家をのぞいてる

つぎはおりがみ やるよー
みんな あつまってー
女の子はすっかり先生になっている
まず 三角に おって……
男の子たちも真剣だ
私も赤色一枚いただいて
彼女の生徒になりました

  センス              伊藤一路

センスは良いとか悪いとかじゃない
その人の生き方
その人が何を良しとするかで
選ぶものがセンス
数ある選択肢の中から決める
どんな人になりたいか
どんな風に見られたいのか
洋服を選ぶ 髪型を選ぶ メークを選ぶ
見た目だけじゃない
言葉を選ぶ 行動を選ぶ 表現のし方を選ぶ
センスって選ぶ力 判断力 決断力
若い頃はセンスがコロコロ変わってたし
見た目でそれを表現しようとしていた
言動に現れるのが本当だと気づかずに
これからは恥ずかしくないセンスでありたい

  闘い               大場 惑

二人は 対峙する
二人は 睨み合う
吠え 唸り 威嚇する

跳びかかり
睨みあい
捩じり合い
地響きを立てて

果てしない闘い
終わることのない闘い
二人が ある限り
いずれかが 倒れない限り

誰も止めることはできない
誰一人近づくことはできない
燃え上がる炎
飛び散る火花
灼熱の輝き

その夜
二人は向かい合って
静かに盃を酌み交わす

互いに 互いを 讃え合い
互いに 互いを 敬い合い
何時か 必ず 打ち負かす日を
互いに 誓い合い

その夜 遅く
二人は 闇の中で別れを告げる
再びまみえ
再び闘うことを
固く約束して