詩誌「詩人散歩」(令和04年夏号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  俺あ いやだ!           浪 宏友

戦争ってのはさあ
だから
喧嘩だろう
国と国とかがさあ
喧嘩してるんだよ 殴り合ってるんだよ

喧嘩したい奴らだけでやってりゃあ まだ いいものを
喧嘩したくない人間まで引っ張り込みやがって
なんだってんだよ

戦車とか ミサイルとか 爆弾とか
ありゃあ 喧嘩の道具だろう
もっと言やあ
人殺しの道具じゃねえか
俺んとこじゃこれだけ人殺しの道具を持ってるぞって
お互いっこ
自慢し合ってるってわけさ くだらねえ

一人殺しゃあ死刑だけれど
百人殺しゃあ勲章だ なんて
むかし 誰かがいってたぜ ばかにしやがって

喧嘩して 壊しあって 殺しあって
さんざんみじめを作りやがってから
うわべばかりの仲直りをして
しばらくたったら また 喧嘩しはじめて

時が移っても
人が 変わっても
やってることは 同じじゃねえか
これから先も
同じことを繰り返すのかよ いいかげんにしろ

あ〜あ
嫌だ 嫌だ
俺あ いやだ!

  戦争なんてものが無いところへ 行きたいよ
誰も 喧嘩なんかしない世界へ 行きたいよ

よう よう
なんとかなんねえのかよ

  風景               中原道代

公園からの帰り道
子供と土手を歩いた
まだ川風は冷たい
足もとにほとけの座がいっぱい
寄りそって咲いている
紅むらさきの可愛い花たち
小さな手がそっとなでる
雪どけを集めた川は流れ激しく
見上げればアルプスの白い山並み
向こうの畑で野焼きの煙がゆれていた

子供はクレヨンで絵を描きはじめた
青い空に白い雲
クレヨンをピンクに持ちかえて
お花畑を描いていく
描く手がどんどんはやくなる
子供はもう絵の中にとび込んで
お花の中をかけまわっている

  信じる              伊藤一路

信じるってどういう事なんだろう
信じるって言う言葉が
もうどこか疑っている前提に思える
何も疑う余地がなければ信じるって言葉は存在しない
信じるって言葉は裏切られた時の言い訳のための言葉
過去の経験や情報を元に想像していた
蓋然性の乏しい自分都合の予想が外れた時に
裏切られたと他人のせいにする為の言葉
信じるという言葉の意味を
全てを受け入れ共に生きてゆく
という意味で使いたい