詩誌「詩人散歩」(令和05年春号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  まどろみ              浪 宏友

どこか 遠い国の 粗末な教会堂
風がゴウッと渡っていく
深紅の道が足元から 永遠の向こうへ
きみが歩き ぼくが歩く

きみとぼくの両側は 空っぽ
だけど
拍手ばかりが響いている

壇上には 光の神父
祈りの声がして
ぼくは リングを きみの指に
真っ白な指に

ぼくは 真っ白なベールを
そっと持ち上げて きみの顔へ
きみの顔へ ぼくの顔を 近づける
どこかでカッコウが鳴いている

あなた
コーヒー はいったわよ

呼ばれて 目を覚ます
この人が
あの人だったか
わからない

  風に乗る              中原道代

北風におされて
私の足は近くの橋に向かっている
すれちがう人もない橋の上
少しの登りで息が切れ
立ち止まって苦笑い
欄干から見下ろすと
誰もいない河川敷が広がっている
初雪で雪合戦をした所
雪玉を投げ合った子供たち
雪玉をつくるのは私
にぎやかな笑い声が聞こえてきそう
やがてあの原っぱが
タンポポ色に染まるだろう
スニーカーにはき替えて
走りまわる子供たち
春よ来い! はやく来い!

強い川風に体がゆれた
私はまた歩き出す
橋を渡ったらまわれ右
さあ 家に帰ろう
山おろしが背中を押す
私の足はどんどん速くなっていく

  今                 伊藤一路

今できる事に集中する
今やるべき事をする
三つ先の事で悩んでるなら
一つ先の事をやろう
やってるうちに三つ目の不安が
解消するかもしれない
問題は横に並べるんじゃない
縦に並べて目の前の事からやっていく
他人の事は気にしない
所詮自分じゃないんだし
そうじゃないと人のせいにしちゃうから
自分が正しいと思う事
自分が必要と思う事
自分が楽しいと思う事
バランスよく集中したらいい
大丈夫
絶対に上手くいく