![]() |
浪 宏友詩集 「恋はどしゃぶり」 −序 詩− |
ずぶぬれになって歩いた たったひとりで歩いた 小さな人家の影もなく 遠くにちらつく灯りもなく 叩きつける雨の中 どちらに向かっているのかすら分からないまま ただ 歩いた
いつのまにか となりを歩いているひとがいた
転んだ拍子にパートナーの手を掴んだ
|
浪 宏友詩集 「恋の涼風」 −序 詩− |
お花畑に寝っころがるといい香りがするな 背高草の向こうに青空があって 真っ白な雲がこんもり浮かんでいる 太陽が隠れるとひんやりするな 太陽が現れるときは金色にまぶしい
お花畑に寝っころがっているときみがかたわらに座る
お花畑に目を覚ますと君がかたわらに眠っている
|
浪 宏友詩集 「真夜中の恋」 −序 詩− |
今夜は静かだね とおい都会が輝いている 喧騒もここまでは届かない 地上の光に覆われて星は姿を現さない うっとうしい気配が地表に漂っている 小高い丘は闇に閉ざされて ぼくたちを静かに隔離してくれる
今夜は静かだね
|
浪 宏友詩集 「恋の舞」 −序 詩− |
ぼくはうずくまっていた うずくまったままで考えていた 考えることはなにもなかった ただ 明瞭な暗闇ばかりがぼくであり ぼくが形をとってあるわけではなく ぼくがいないわけでもなかった
無数の時刻がぼくをスライスした
|
浪 宏友詩集 「恋の波頭」 −序 詩− |
彼方から吹き寄せる風に促されて 離れ近づき 近づき離れ 波のうねりにもまれるうちに 握りあっていたあったかい手 うねりの表にさざなみとなって うねりの奥に渦となって きらめき隠れ 隠れきらめき 永遠のときを踊っていた 気付けばいまや波の頂き 遥かな向こうまで見わたせる高み 握りあう手と手が離れることはないけれど 昇り詰めたからには あとは 一気に落ちるだけ たがいの姿を見失っても 声も立てず 捜しもせず 波頭とともに砕け散る 握り合う手と手は決して離れないけれど (1987年)
|
浪 宏友詩集 「夕闇の恋人」 |
(一)
青空がとぶ 雲が光る
広い原野を
(二)
足音が夜にこだまして
ふたりは
(三)
恋が生まれ
ぼくの旅路は |