詩誌「詩人散歩」(平成16年秋号)
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  遠き日を思う                山口ハル子

人形を抱きて遠き日を思い出す顔を見ながら乳を飲む子を

やさしさを忘れし親の多くして世も変わりたりと新聞見ゆく

物不足の戦後の母乳は足りゆきて遠い日のこと思い出される

二つ上の隣の人は子は泣くも出血に声なく我が乳を飲ます

三十五度をこす暑き日々陽しづみてようやく涼しく風頬なでゆく