詩誌「詩人散歩」(平成18年夏号)
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  桜咲く                   山口ハル子

ぢんちょうげ寒さにたえてふくらみし春を待つかにピンク色なり

山桜あちこちに見る春近し寒さも終りと私もうきうき

目覚めると道路むかいの桜目に小さき頃より見るもういくつ

電線に小雨降る中二羽のカラス止まりて仲良くしばしばながむる

嫁植えしつつじの咲きて日毎ながむ花の咲きしは心はなごむ

  我が道                   藤井正子

今日も又便り待ちつゝ日が暮れて街の明かりも涙でにじむ

音もなく降る初雪に思い出す昔なつかし韓国の空

気をつけて何時もかわらぬ母の声背にうけて出るバス停の道

白衣着て朝の挨拶さわやかに血圧はかるナイチンゲール

年老いて我が行く道はけわしけれ車椅子にてリハビリの日々

  野の道                   山元和子

うしろからポンとたたいて春の風なまあたたかく通りすぎゆく

うらにわに白くさいてるゆすらうめひと雨ふればちる命かな

野の道をふと下みれば春のかおつくしんぼうがにっこりわらう

上棟式人あつまればざわざわと頭に当る赤白のもち

孫きたり一夜泊りてうれしかな戻りしあとの淋しさよ