詩誌「詩人散歩」(平成18年冬号)
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  秋                     山口ハル子

夏なりと思えど暑き日になりき涼しき風の秋の待たるる

秋風に連れて遠い日のこと思いて祖父祖母を思いなつかしきかな

夕べには虫の声しきり秋も近し夫子を想いほろりひとしずく

秋になりゆれるコスモスとりどりに季節わすれず秋の花咲く

ひたすらに貧しく戦後を生きてきて背に泣きし子等よ一人は逝きぬ

  秋                     藤井正子

里がへり昔のともはなつかしく年をわすれてブランコゆする

我が家の庭に咲いたる草花の色までみえる秋の夜の月

秋風にゆれてやさしい風鈴の音ききながら昔をしのぶ

すいすいと窓辺近くに赤とんぼ今年も秋をわすれずにとぶ