詩誌「詩人散歩」(平成19年夏号)
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  夕日                    藤井正子

そよそよとふく春風にさそわれて小川のほとりつみくさをつむ

車椅子片手でおして病める友髪のみだれにあわれをさそい

日暮れ時ねぐらへ急ぐ鳩のむれ赤い夕日につばさひろげて

  日々                    山口ハル子

子に別れ悲しき心いかにすべき歌にたくして三十六年過ぎぬ

住む人も無き妹の家十五年過ぎぬ嫁ぎし娘こわして淋し

妹を乗せて走りし師走の夜救急車は今日も走り行く

子の逝きて日々泣くばかり過ぎゆきぬ年間歌集も三十五冊なり

嫁植えしつつじ芝桜美しい朝夕ながめて心和みし

窓辺より見ゆる桜も葉桜となりて今年の春も過ぎゆく