新しき年 山口ハル子 |
風も無く太陽は照り春が来た春が来たと口ずさむなり
正月は兄弟集まり元気でねと酒汲みかわす元日も過ぎる
私が一番の姉九人も育てし親を思いて手を合わす
(母、九十一歳で逝去の折りの歌)
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特養にて、私の闘病記 櫛田令子 |
病(いたつき)にこもりゐる事長くして唯ひたぶるに家路を恋ふる
(これが山崎條一様との出合でした。それより十年の月日を、特養ホームにお世話に成ることとなりました。
「歳月人を待たず」のことはざの通り、孫の晴彦が結婚し、二児の父親になりました。私は特養にある身で、
我が家では、主人と息子が結婚式に参列しました。)
九十四の母を葬りて安らぎぬ今朝の目覚の心地かな
うた詠みのそのはしくれの我にして時をりしのぶ今は亡き師を
車椅子押しくれし友あり外(と)にあれば小春日和の風のやさしき
いねさめて今日のひと日の命あり施設にありて安らげる日々
富士登頂を果たせし若きナウスの我に賜びたり夏の赤富士
「寒かったよ」「車びは登らないよ」と吾に送りくれし絵葉書の文字
富士登頂を果たせし乙女よ時に羨しき是れなる吾は
乙女汝れ若き夢今ぞ果して安かめやも
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