詩誌「詩人散歩」(平成22年夏号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  正月・花見                 山口ハル子

風もなく太陽は照り春が来たと春が来たよと口ずさむなり

正月は兄弟よりて元気でねと酒くみかわす元日も過ぎる

私が一番の姉九人も育てし親を思いて手を合すなり

  短歌                    櫛田令子

   二千八年二月二十一日
有明の月は円(まど)かに、白く浮き、如月二十日今明けんとす

   二千八年七夕
七夕に、願うことなし、いたづらに齢を重ねて喜寿をむかへぬ

天の川へだてて会はむ、二ツ星今宵は晴れよと神に祈りぬ

織姫の夫(つま)にまみゆる一夜なり、雨よ降らすな天地の神

己が身の、一代記語り、とめどなく施設の朝のつとにかしまし

夫(つま)と逢う、昼のひととき、楽しかり、飯もうましよ今の安らぎ

   二千八年八月
明日あるを、信じていねし真夜の夢、夫、子、孫、彦、憩いて在りぬ

好物を、たらふく食し、足らひたる、これ本能と云うべきか、否か

   二千九年一月元旦
吾が生の、証し残さむと、思へども、短歌(うた)にはならず、ただ励むのみ

金色の鈍(にぶ)き光を、放ちつつ、月は円かに、心照らしぬ

再びを学び直さん思ひにて、万葉季歌取り寄せて見ぬ