短歌 櫛田令子(光蛍) |
十津川に寄す (十津川に宿せし事の遠けれど山鶯の声蛙の声今も耳に残りて)
十津川の水害ニュース聞く彼岸会の朝彼岸に葬きませり人のあわれよ
この特養に津波なし吾に返りぬ朝まだき涙して見る十津川に歌友の有りせば
敷島の道教えくれにし十津川村今吾が忘れあらなくに
今日生きて有らば明日又生きんと思いつも今暮れ近く心うつろに
夕光の輝く雲にいささかの願いを込めて明日の晴れ待つ
秋の風
伏床の風や淋しく窓の外秋深まりて今わくらば紅く葉先たれたり
福島第一原発は夫の故郷夫のはらから四か月余を行方不明にて秋たけなわなり
特養の独居の淋しさを云う術もなく老夫も吾も共に老いたり
今朝の空十月の空真澄たり吾が命こそ真幸けく有りなむ
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