桃歌 櫛田令子(光蛍) |
寝ねさめて人恋ふる日よ夫(つま)と逢ふ昼待ちどおしあと三時間
立春の温(おだ)しき光射す中の夫(つま)との散歩いと楽しかり
何をせむ思ひもわかで過ぐる日よ明日につなげる生命(いのち)を生きて
歌日記残さむ思ひに吾が心なぐさめられつ今宵もくれぬ
週末の天気気遣ふも常のこと夫(つま)の訪ひ来るその日待たるる
卓の上の桃花一と片舞ひ降りぬコーヒーカップに浮かびしままに
桃花咲く何時か散りぬることわりをうべないつつも汝れ急ぐなよ
桃の蕾何時か咲きて散り急ぐ今より散るな床上げの日まで
諸人の恵みに生きついたづらに齢重ねて喜寿一つ越ゆ
彼岸きて日々に暖しき昼の外(と)や足なるのことしばし忘れつ
生きる事せつなく思ふ朝夕を夫・子・孫・彦有るをなぐさむ
花見会の桜は咲かず茶会にて花より団子のことわざも有り
一日をなす術(すべ)もなき歯の痛み生の証しとうべないて耐ゆ
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