詩誌「詩人散歩」(平成24年春号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  桃歌                  櫛田令子(光蛍)
寝ねさめて人恋ふる日よ夫(つま)と逢ふ昼待ちどおしあと三時間

立春の温(おだ)しき光射す中の夫(つま)との散歩いと楽しかり

何をせむ思ひもわかで過ぐる日よ明日につなげる生命(いのち)を生きて

歌日記残さむ思ひに吾が心なぐさめられつ今宵もくれぬ

週末の天気気遣ふも常のこと夫(つま)の訪ひ来るその日待たるる

卓の上の桃花一と片舞ひ降りぬコーヒーカップに浮かびしままに

桃花咲く何時か散りぬることわりをうべないつつも汝れ急ぐなよ

桃の蕾何時か咲きて散り急ぐ今より散るな床上げの日まで

諸人の恵みに生きついたづらに齢重ねて喜寿一つ越ゆ

彼岸きて日々に暖しき昼の外(と)や足なるのことしばし忘れつ

生きる事せつなく思ふ朝夕を夫・子・孫・彦有るをなぐさむ

花見会の桜は咲かず茶会にて花より団子のことわざも有り

一日をなす術(すべ)もなき歯の痛み生の証しとうべないて耐ゆ