特養にて春花見会 櫛田令子(光蛍) |
朝食には未だ早やきと思ふ故に何を記さん頭ひねりつ
老いは悲しも美味も不味も解らず唯飯を食むこの特養の生活に慣れて
食堂にて外臨むればこぼれるばかりの桜咲きたり
何時の世に不老不死のあらざると知りても明日への希望捨てずに老いて
夕来くば夕べに祈り又も断ちがたき生への未練老夫あれば唯に生きたし
この朝に一首を詠みて一日一日を生きて楽しむ
夕陽に輝し雲の峰の美しければ思わず合掌す明日又生きる力となりて
日毎日毎の食堂に桜を見つつ食事するこの春をこそ祝はむとする
桜大樹の小枝は揺れて夕宵を今散らむとして揺れて美し
花見気分に浮き立ちしこの特養は花盛りなり
春風にふるへる如き桜大樹を見つつ文案書く今日の良き日に
桜茶を飲むその昔々の結納の時以来のいにしへ思ほゆ
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