詩誌「詩人散歩」(平成24年秋号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  短歌                  櫛田令子(光蛍)
   六月の風
台風一過涼風立ち渡る六月のやさしき風に八丈島思ふ
毎日のニュースは伝ふ八丈は波風強く被災のおそれおののく人あわれ
入浴日湯浴に想う亡父の里塩原紅葉初めたると出湯の窓に小枝ゆらぎしを
新居なる浜田山の家何時遣るともなく家路恋ひ居る

   万葉に学びて
一世かけて読むかひ有りと思ふとも四千余首読みつくす迄の命たまへや
日本の心を詩みけむ心を教えけむ万葉に学びて詩の道有りと思ふこの頃にして
黄泉の道は知らなくに行きつく所御仏の御意のままにと思う心に安心を見つ
夕暮れて夕光照らす束の間を拙歌詩はむ物書きの娘は

   彦(曾孫)の結婚
織姫にはあらずとも二人の男女結ばれし今日目出度くも婚の儀おこなへり
学生の頃より相親しみし二人なれば良き家庭良き夫婦となりぬべしかや
目出度くも初孫、彦(曾孫)二人の婚をみし吾の命の限りの喜びとせり
現世を生きて老後も余生もなかりしを今有る生命も楽しと生かめ

  嫁の指                 石塚和子
カーテンを開けくれし嫁の指さざん花一つ
鶴首に挿されし一輪の侘助は眠集めて音もなく落つ