詩誌「詩人散歩」(平成24年冬号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  短歌                  櫛田令子(光蛍)
黄泉の道は知らず只老いて定かに来る吾が八十を過ぎし
現身は果つるべき命も長からずと思ひ定めて今日も学びぬ
物書きの亡き父の言葉の常思ふ「学問は一生末代のものと」長女の吾に常に聞かせし尊き言葉
ふつつかの娘にしあれども父の娘故に常に学び学びの道を志したり
吾が命もはや黄泉に近しもつきせぬ思ひは万葉を深く学びて古人の歌詩の心知りたし
古きを学びて新しきを知るも又良からずや古代ありて現代有りと思ひし故に

   私の青春 八月十五日に思ふ

古人なる吾や戦争と戦後に生きし国難を今も忘れあらなく今日戦争記念日
幾万の血を流したる戦争を大君の詔かしこみ大和撫子十七歳の吾はひたすら忠に生きとせし
ひねもすを経誦して過す沖縄に征きし学友を偲びて青春を駆け巡る血は一つ祈る命も又一つ
八月十五日玉音放送に涙し聞きつも昔のこと生も死も一つの命吾は八十を過ぐ
フランス文学の教師云えり「死者再び送らざる生ある者何をなすべきか」答えは云えず老へ及ばず