詩誌「詩人散歩」(平成26年秋号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  短歌                  櫛田令子(光蛍)

  ◇五月のうた
今日晴れて朝風呂に入りて眠し心地良きままうたた寝をせり
五月の風の心地良きかな身を任せて朝のひと時
五月人形飾りてありし楽しまむ息等皆親となりて
神田川畔の桜葉陽に映えて木の下枝に吹く風やわらかし
涼風を受けてマラソンする人に川に住む鯉は餌ねだるげに見ゆ

  ◇特養の夜明け
朝夕の陽の光向ひ合掌す明日の命を祈るにあらねど
十有余年の独居に伏床は寒し朝光の今し昇らむ大き太陽
既にして桜大樹は深緑となりぬ緑の木陰歩みてみたし車椅子の嘆き
今日晴れて心地良きかな生命ありしをただ喜びいたり

  ◇友との語らい
歌友あらば思いあふれて拙歌詠む生のあかしの共に語らむ
年ごとの賀状に記す友の文字「御元気ですか、御元気でね」共に老いたる齢にしあらば
語りつきぬ夢の内だに白々と光射し込む特養の窓辺の床の吾は泣かむ
法友の語り部にならむ生きし証の一冊の歌集命つぎ込み夜のふけにけり