詩誌「詩人散歩」(平成26年冬号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  短歌                  櫛田令子(光蛍)

  ◇九月の風
九月の風の姿もなく穏やかに陽の射して風心地良く吹き渡り行きぬ
秋の風の偲び来て木々の緑葉はかそかに紅さし初めにけり
この日暮れて流るる雲や夕空の浮かべる雲に入り陽輝きぬ
風邪に伏す幾日過せば心は少しく乱れてありぬ
何をせむ心も涌かで友よりの便りを繰り返し読みつつ古しへ思ほゆ

  ◇屋上にて
秋の盛りの風寒ければ冬ぞ偲ばる吾が身に吹く風は
茶と菓子と喉通れどそこはかと吹く風の空は眞澄みて肌に寒かり 夕焼けの雲の峰の美しやしばし見とれて今日一日の暮れなむとする
窓に寄りて眺むる空の色の霞深く星一つあり今日晴れるらし