短歌 櫛田令子(光蛍) |
◇ 秋の空ゆ眞澄みて高し伏床に仰ぐ今日の空かな 秋風に黒き木立の照り映えて青空映える雲の美し 硝子戸を開けて仰げる伏床の空ゆいたく眩しく床を照らすも 行末の人の無常を思ふ日よいよよ淋しく病友を葬るも ◇ 今朝の空ゆ朝光まぶし幾多のゆめ一つに纏めむとはする 太陽は今し昇らむ茜雲この朝空に鋭く光りぬ 草木皆命たたえて光りおり己が命の光もあらまほりしを 何時になく心地良かりし目覚めなり朝の光のもと一首おさめむ ◇ まぼしげに空を見上げしこの頃の八十三歳すこやけくあり 春風の吹くことはげしひと夜寝て梅の蕾は地に落ちていたり ゆめむらく吾がはらからは何地にあらむ便りなきを良しと生かめ 人の死をかかずらふ事なくこの頃も葬くとし聞けばいよよ淋しき
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