詩誌「詩人散歩」(平成27年春号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  短歌                  櫛田令子(光蛍)

     ◇
秋の空ゆ眞澄みて高し伏床に仰ぐ今日の空かな
秋風に黒き木立の照り映えて青空映える雲の美し
硝子戸を開けて仰げる伏床の空ゆいたく眩しく床を照らすも
行末の人の無常を思ふ日よいよよ淋しく病友を葬るも
     ◇
今朝の空ゆ朝光まぶし幾多のゆめ一つに纏めむとはする
太陽は今し昇らむ茜雲この朝空に鋭く光りぬ
草木皆命たたえて光りおり己が命の光もあらまほりしを
何時になく心地良かりし目覚めなり朝の光のもと一首おさめむ
     ◇
まぼしげに空を見上げしこの頃の八十三歳すこやけくあり
春風の吹くことはげしひと夜寝て梅の蕾は地に落ちていたり
ゆめむらく吾がはらからは何地にあらむ便りなきを良しと生かめ
人の死をかかずらふ事なくこの頃も葬くとし聞けばいよよ淋しき