詩誌「詩人散歩」(平成27年夏号)

yuyake
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  短歌                  櫛田令子(光蛍)

     ◇
窓越しに見る桜花外面に居たき心地の夢にぞありて
桜花花びら舞いし神田川春うららかに夢心地して眠気もようす
神田川の面を飾るがごとき桜花流れもせず鯉と遊ぶも
特養に寒さも知らず住みし身も老いを感じるこの頃にして
     ◇
たちまちに若葉の候となりにけり病ここにいる日の長ければ
古へを思う心の深き故この心変わらず友を偲びぬ
幼き頃の思い出の唯懐かしく我も老いたるかな
古きあさひこ用箋取り出して見る唯懐かしく歌友のたれかれ
     ◇
特養の生活(タツキ)になれてリハビリと思い煩うは少なくなりぬ
満開の桜を見つつ食事するこの幸せや何にたとえむ
ペン持つは常の慣らわし字の書けぬ今のいらだち如何に静めむ
何時までも咲けよと思う桜花なり散りぎは良しといみじくも云ふ