年の暮 山口ハル子 |
いつしかと師走に入りて日向路も朝夕の寒さにストーブを出す
五時の時計聞けば寒々と陽は落ちて師走の風は肌をさすかに
子等夫婦と紅白合戦見終えて幸な新年とあかりをともす
正月の残りのものをあれこれとならべて食べる一人の食事
亡き夫の好みしぞうにと金時豆偲びて我も一粒一粒箸にはさむ
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二〇〇一年回顧詠 辻村哲久 |
車椅子夫婦ダンスの麗しさ舞台の袖にてやさしく見守る
家系図に菩提寺あまた記したる祖父を偲びて周年史綴る
道場に通う径すじに四季の花賞でつつ今日も感性磨く
埋(まい)写経儀式つぶさに塔をみつ貫主の僧衣に朝日映えたり(波木井山)
潤滑油たりしか二十有五年会長賞を授かる吾は(東京都福祉大会)
編集員の労苦を謝して国立図書館へと納本手続きに行く(南多摩教会五十年史)
はからずも靖国の宮に昇殿正座せりみ霊ら安かれと玉串捧ぐ(開戦六十年)
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