詩誌「詩人散歩」(平成14年夏号)
◆これまでの【短歌】を掲載しています。

  無題                  徳永恭造
新雪がまばゆいばかり輝いて我れ越後にて良くぞ生まれり

四月より小学校へ通う孫目に浮かぶよな日々待ちかねて

海近く浪の音すら微にとうなり声だか波音響き

夕闇に何を焼くやら煙り立ち枯れ葉か藁か煙り一筋

春風かゴミが飛びかい我が家の塀を飛び越してお互いさまとし

日々の陽の長さ泣かされ予報はずれの雨となりけり

春の陽を浴びて遊びし我が孫の背に一杯の光りを浴びて

春霞み窓の陽ざしがまぶしくて外は寒かろ人夫さんたち

吹く風に日傘持つ手が冷たかろ手袋はめて昼の買物

立春も過ぎてしまえばもうすぐに春が来たとも外は雨なり

  春近し                   山口ハル子
節分を過ぎて陽ざしは暖かく春は近くに来しと思う

夫植えしぢん丁花の花今年も寒さの中に匂ほのかなり

春の陽をいっぱいうけて墓参りつくし見つけて夫に告げたり

車窓より見ればチラホラ山櫻早三月も中頃となりぬ

親戚の葬儀を今日は見送りぬ柩に櫻ハラハラと散る

  四季の想い(冬に)             佐藤恭子
せかされてこわごわ降りる電車かな幼きころのわれに似ている

透明な時代を生きるおれたちにふりしきる雨心がすさぶ

屋根はパン雪はチーズでとろけだし春も間近のピザトーストさ

別れの日誰のセリフか口に出るさよならだけが人生さとか

今朝はいて出掛けのときにでんせんのストッキングにはやな予感して

あちこちでつぼみ開いた沈丁花春の香りに胸躍るよう

過ぎる時減る食材を待っている忍耐くらべの弁当作り