詩誌「詩人散歩」(平成17年春号)
◆これまでの【エッセイ】を掲載しています。

  返事のない手紙                         山口ハル子


 返事の来ない手紙をふと思い出したようにペンを取ってみました。
 父さん足を折り立てぬまゝ遠い所へ行って足は立てるようになりましたか。
 病院へ行くと、母さんと言ってなつかしそうに言っていたけど六年あまり一人の暮しに馴れてきました。
 厚焼玉子が好きでよく焼いて病院に持って行くと美味しそうに食べていましたね。 生きる日々を話し相手があり、見なれた顔があると幸な事だと思います。
 父さん私も仲良く、時には口争いをしたり、過ぎ去った日々をなつかしく思い出しては過ごしています。
 お正月も事もなく過しました。今年も元気でありますようにと、お祈りしながら手を合わせております。
黄泉路の旅は、果てしなくつヾきます。ゆっくりと旅をつヾけて下さい。またお便りします。