詩誌「詩人散歩」(平成17年冬号)
◆これまでの【エッセイ】を掲載しています。

  秋の日                             山口ハル子


 秋の夕焼かまをとげと昔からの言葉がある。ふと西を見ると夕焼きれいに赤い。明日もよいお天気だと一人見てつぶやく。肌寒くなって来た。十月だものねと一人言。秋は何となく淋しい。父さん、子を思いほろりとひとしずく。
 東京オリンピックには長男は高二年の時聖火を持って走り、道にはパンパスグラスが白い穂を風になびかせていた。延岡の中継所についた時は感激に涙がほろほろと頬を流れた。スポーツは何でも来いで、柔道はキャプテンもするし、元気な子であったのに、二十三歳の若さで世を去った。

 亡き吾子が聖火を持ちて走りたる道のパンパスグラス窓に見えたり

 コスモスも満開、美しい。だが花を見ると秋に世を去りし子を思いて毎年頬をぬらす。
 父さんと仲良くゆっくり旅を続けて下さい。