詩誌「詩人散歩」(平成13年秋号)
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  日南行                       山口ハル子

 久方に老人会で日南行が計画され私も参加することにした。杖をつきながらのであるが外の空気は楽しい。眼下にひろがる堀切峠の美しい景色どこまでつゞくかと思われる海。つくられたような波状岩たゞ見とれるばかりである。海を見ながら午前十一時宿に着き早速温泉にはいる。
 中食後一句「重き腰上げきて楽し今日の旅」拍手を頂いた。
 父さんが曹長の時中国より休暇で帰り飫肥まで戦死をされた方の家に行った。鵜戸神宮に参拝する。石段に軍刀があたりコツコツと音がする。今も眼をとじると昨日のように思い出される。
 次の休暇中国へ帰る父さんを下関まで送って行った。凛々しい軍服姿。船尾で何時までも手をふる姿は目に残る。さようなら別れの涙は今も波間にたゞよっているかもと思う。
 山口准尉殿敬礼遠く海の彼方に消えて行った。名物のウイロウ、飫肥天は重く思ったが近所への土産はよろこばれた。楽しい一日であった。