幻 覚 大場 惑 |
ポケモンGOのアプリをスマホに入れると現実の風景の中にポケモンが現れる。これを捕まえたり、育てたり、バトルしたりする。 そんな話を聞くうちに、かつて学んだことのある「幻覚」を思い出した。
幻覚とは、他の人には見えないものが見えたり、聞こえない声や音が聞こえたりする現象である。本人が幻視したものに手を伸ばしたり、幻聴に答えたりするさまが、周囲の人には奇妙に見える。
ポケモンGOは、いわば、人工幻覚だなと私なんかは思う。公園などで、大勢の人々がスマホを見ながら幽歩(遊歩ではない)しているさまが、そう思わせる。
最近、バーチャルリアリティというテクノロジーが報道されている。
人間は自分の感覚・知覚を通して認識したものを実在するものと受け取り、これに対応する行動を取るが、それに留まらない。さらに過去からの記憶や、推理・推測によって生じたイメージなどが混然となってさまざまな認識が生じ、これに対応して行動する。
学問的な定義は知らないが、仮に、実際の事実とは異なる認識を持ち、これに対応して行動することを幻覚あるいは幻想と名付けてみよう。すると、われわれは、幻覚・幻想の中で日常を送っているような気がしてくる。幻覚・幻想と実際の事実の中で、危うい生活をしているように思えてくる。
人を待ちわびているときに、鳴りもしないチャイムが鳴ったと思って、玄関に出た経験がある。これは、幻聴のたぐいであろう。
他人の幻覚・幻想は止められない。せめて自分は幻覚・幻想に惑わされないでいたい。実際の事実の中で、適切に生きていきたいとつくづく思う。 |