詩誌「詩人散歩」(平成30年秋号)

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  ファイダーの粘り強い努力          浪 宏友


 「ファイダー(FIDR)」の略称で知られる「公益財団法人 国際開発救援財団」から、『年次報告2017』をお送りいただきました。ファイダーは、御存じのように、開発途上国の人々の生活環境の向上や地域産業の育成などのために力を注いでいる財団です。

   ファイダーの支援は、現地の人びとと共に考え、共に行動し、やがて現地の方々が自分たちだけで活動を続けられるようにと願いながら行われているようです。
 折々お送りくださる「ファイダーニュース」や「年次報告」に、現地の人々の声も紹介されていますが、その中に「ファイダーの方々は、私たちが行動を始めるまでじっと待ってくださった」とか、「ファイダーの方々から学んだことを、私たちの手で役立てていきたい」というようなコメントのあることが、ファイダーの方々の努力が実りつつあることを物語っていると思いました。

 今回の年次報告に、「カンボジア初、学齢期の子どもたちのための『食生活指針』が完成しました」とありました。
 カンボジアの子どもたちの栄養状態はかなり深刻なようです。遊んでいる子供を見て七〜八歳かなと思っていると、十歳だったというくらい、発育が遅れているようです。栄養という概念が希薄で、十分な栄養を、バランスよく摂取するというようなことは、ほとんど念頭になかったらしいのです。

 ファイダーは、長年、カンボジアの乳幼児を含む子供たちの栄養の改善に取り組んできました。それも「現地の人々が自ら栄養改善に取り組む」ことを願いながらの取り組みですから、並大抵のことではありません。
 一年前の年次報告に、ファイダーの主導によって、「医療機関用の栄養手引き」が完成したという記事がありました。カンボジアでは、医療従事者でさえ栄養に関する理解が乏しかったらしく、その意味でこの事業は画期的であったようです。

 この記事の中に「ファイダーは、二〇一四年から全国調査を行い、カンボジアの学齢児童の栄養事情を明らかにしました」とあります。この調査などから見えてきたものを手がかりに、ファイダーを中心としたワーキンググループが検討を進め、「学齢期の子どもたちのための食生活指針」がまとめられたということのようです。

 年次報告といっしょに送っていただいた「ファイダーニュース」を開きましたら、そこに関連記事がありました。この「食生活指針」が、国連食糧農業機関(FAO)のサイトに掲載されたというのです。「これは、この指針が調査と解析という科学的根拠に基づき、国際的に定められたガイドラインに沿って作成されたものとして認められたことを意味します」と、この記事にあります。

 これと並行して、カンボジア教育省では、学校で栄養教育を導入する方針を立て、カンボジアの栄養に関して経験があり、専門性も高いファイダーに、技術支援を要請しました。ファイダーのさらなる活動が続くわけです。
 栄養改善の知識と活動が、子どもたちから親へと伝わり、やがて社会に浸透していく。このようなすがたが、ファイダーの方々の胸に描かれているのではないでしょうか。

 ファイダーへのご協力をお考えの方は左記までご連絡ください。
 公益財団法人国際開発救援財団
    電 話・03-5286-5211
  FAX・03-3294-2525
 メール・fidr@fidr.or.jp
  ホームページ・http://www.fidr.or.jp