子供のころの遊び
子供のころ、あぶり出しを遊んだことがある。
蜜柑の果汁をお皿に絞り出し、小筆に浸し、白い紙に文字を書く。これが乾くと何
も見えなくなる(という予定なのだが、実際には果汁の色が残って、少しだが見えて
しまう)。乾いた紙を火鉢にかざすと文字が黒く現れる。秘密の手紙などと称して遊
んだものである。
水に浸すと文字が浮き出るというものもあるという。みょうばんで書いて乾かした
ものを、水に浮かべると文字が出るのだそうだ。
京都の貴船神社では、水に浮かべると文字が出るおみくじがあるという。不思議さ
いっぱいで、おみくじの有難さが倍増する。これは、特殊なインクを使っているらし
い。
潜在意識
人から嫌なことをされると、ムッとする。これなどは、仏教的に見れば、自分の内
面があぶり出されている瞬間だと言える。「ムッとする」とは、怒りがこみ上げてく
ることを言っている。これは、自分の中に、自分本位の執着があることを示してい
る。執着がなければ「嫌だな」とは思っても、怒りの感情がこみ上げてきたりはしな
い。
俺はできた人間だなどと表面を飾っていても、何かあれば、潜在意識に巣くう執着
があぶり出され、とんでもないことを口走ったりする。長い間かかって培ってきた信
用が、この一言で潰えたり、人間関係が険悪になったりする。
自分の執着があぶり出されたらどうするか。なんとか繕って済ませようとするか。
さらに覆い隠そうとするか。いっそのこと開き直るか。自己反省をして自分を治す努
力に入るか。それぞれの姿がそこに現れる。あたかもあぶり出しのように。