詩誌「詩人散歩」(令和05年春号)

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◆これまでの【エッセイ】を掲載しています。

  「カンボジアの栄養教育」       浪 宏友


 昨年の秋に、FIDR(公益財団法人国際開発救援財団)から機関誌「FIDR NEWS」をお送り頂きました。そこに「カンボジアの学校に『栄養教育』を!」と題する記事がありました。私は、粘り強く取り組んでいらっしゃるのだなあと思いました。
 それは六年前の同誌に「『食事バランスガイド』で子どもたちの栄養改善を目指す」という記事があり、カンボジアの子どもたちの栄養改善への取り組みが紹介されていたのを思い出したからです。
 その記事によれば、さらにさかのぼること八年、FIDRは、カンボジアの首都プノンペンにある国立小児病院で、栄養に配慮された病院給食の導入に取り組み始めていたのです。かれこれ十四年にわたって、カンボジアの子どもたちの栄養改善に心血を注いでいらっしゃるFIDRの皆さんには、本当に頭が下がります。
 記事によって推察しますと、カンボジアの学校や家庭では「栄養」という言葉がほとんど使われていなかったのかもしれません。栄養の知識不足ゆえの偏った食生活によって必要な栄養素を摂取できず、周辺の国々と比べても子どもたちの体の発育が十分ではなかったようです。
 そんななか、カンボジア政府は、小学校・中学校・高等学校で、保健科目の授業を始めることとし、栄養についても体系的に教えることにしました。そしてFIDRに協力を要請しました。
                FIDRの基本姿勢は「やってあげる」ではありません。「自分たちでやれるようになってもらう」です。
 しかし、何にしても、はじめは見知らぬ世界に入っていくようなものです。手を取り足を支えというような活動から始まるでありましょう。そして、だんだんに自立してもらい、ついには自分たちで創造性のある活動ができるようになってもらうのでありましょう。
 栄養に関する教科書づくりに着手したときも、そのようであったと思われます。教育省で学校保健を担当する職員でも、栄養に関する知識が曖昧だったそうです。そのため、五大栄養素(たんぱく質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラル)の知識から学んでもらう必要があったようです。
 それでも、一歩一歩前進し、三年かけて小学一年生から高校三年生までの教科書原稿が完成したそうです。この間、教育省の職員や、現場の先生方が積極的に汗をかいてくれたようです。
教科書の準備はできましたが、カンボジア全国で栄養教育を始めるには、まだまだ、やらなければならないことがあります。FIDRの皆さんは、カンボジアの人々と共に、次の段階に取り掛かっています。
 FIDRの皆さんが行なっている、カンボジアの学校で栄養教育を始める活動についてお知りになりたい方は、特設ウェブサイトをご覧ください。
 特設ウェブサイト https://www.ei-yo.org/
 お問合せ 電 話 03−5282−5211
      メール fidr@fidr.or.jp