[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◆経営と自己実現

 企業経営とは、企業を管理し運営することですが、このとき経営者は自分の心の中にあるものを実現しようとします。経営は必然的に経営者の自己実現となるのです。 経営者が実現しようとするものはさまざまです。金儲けだけを思い描いている経営者。家族の生活費さえ稼げればいいという経営者。会社を大きくすることに魅力を感じている経営者。人々のために自分のできることをしようと考えている経営者。新しい文化を世の中に広めようとする経営者。 いかなる思いにせよ、実現するためには何をどうすればいいのかを考え、それぞれに努力を重ねることになるでしょう。

◆経営理念と人格

 経営者の心の中にあるものを、ビジネス縁起観では「経営理念」と名付けます。社長室に額に入れて飾ってあるいわゆる経営理念と、経営者の心の中にある本当の経営理念が一致していることが望まれます。
 よく、経営理念が無いなどと言われることがありますが、ビジネス縁起観の考え方では経営理念が無い経営はあり得ません。何の思いも持たずに経営している人は居ないからです。
 このときは「経営理念が無い」ではなく経営理念が低いと言います。心の中の思いは、その人の人格の現れであると考えられますから、経営理念が低いと言うことは、その経営者の人格・人間性が低いことを現すこととなります。

◆経営理念の力

 企業は内外の経営環境に応じて適切に管理・運営されなければなりません。経営環境は刻々と変化します。これに応じて経営の形や内容も、管理・運営のありかたも変化させなければなりません。
 経営環境の変化に振り回されるようなありかたでは、危なっかしくてしようがないでしょう。次元が低い経営理念は脆弱ですから、そんなことになりがちです。
 経営理念がしっかりしたものであれば、いかに経営環境が激変しても、方向を間違えることはないでしょう。いわゆる、ブレない経営ができるはずです。
 次元の高いしっかりした経営理念を持っているかどうかは、経営者として成功するかどうかの第一条件であると言われるのもこうした理由からであろうと、ビジネス縁起観を研究する私たちは考えています。
☆「詩人散歩」平成19年秋号に掲載