釈迦牟尼世尊は、『シンガーラへの教えー善生経』で、仕事と財について説いています。
真面目に働けば、財が集まります。そうすれば家族を幸せにしてあげられます。
集めた財を正しく運用すれば、友人たちを結束することができます。これは、リーダーになれるということだと思います。
釈迦牟尼世尊は、財の正しい運用について説いています。
まず、集めた財を四つに分けます。
四つのうちの一つは自分で使います。これは生活費などに充てるということだと思います。
四つのうちの二つを仕事に充てます。この数字から、釈迦牟尼世尊が仕事を重視していたことが推測できます。
四つのうちの残り一つは、蓄えておきます。人生にも、仕事にも、この先何があるか分かりません。災害があったり、仕事ができなくなったりして窮乏したときのために、あらかじめ備えておきましょうという教えです。
本当に、一寸先は闇の世の中です。コロナウイルス感染症の蔓延で、政府は緊急事態宣言を出しました。これによって多くの会社が事業を進めることができなくなりました。しかし、固定費は容赦なく出ていきます。会社はたちまち窮乏に陥ってしまいます。
政府は、事業継続のためにできる限りの支援をするという姿勢を打ち出しましたが、どうしても限りがあります。
私の近くで、比較的大きな会社が、早々と経営破綻してしまいました。
逆に、商品を無償提供する会社もありました。一社や二社ではありません。
江戸時代の豪商が、飢饉のときに、人びとのために無償で米を提供したという美談を聞いたことがありますが、現代の中小企業にも、そういう方々がいらっしゃるのです。
こうした違いが生じるには、さまざまな事情が関係していると思いますが、その中のひとつは、蓄えだったのではないでしょうか。
目先がよければそれでよいという刹那的な経営では、危機が訪れたとき対応できなくなります。あらかじめ危機に対する準備をしておくことが、経営者としての責任ある行動でありましょう。
経済的な蓄えと同時に、さらに重要な蓄えがあります。信頼です。
長い間に信頼を培ってきた会社は、危機に遭遇した時、周囲が支えようとするものです。
信頼という蓄えと財の蓄えが揃っていれば、大きな危機に遭遇しても、乗り越えることができるに違いありません。(浪)
☆「詩人散歩」令和02年夏号に掲載