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◆布施行大乗仏教では、菩薩の実践徳目として六波羅蜜を説きます。六波羅蜜とは、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六つの徳目です。その第一は「布施」です。 布施とは、与えることです。人が必要としているものを与え、与えたことによってその人が幸福になるならば、布施をしたと言えます。
◆企業経営企業経営では、顧客が必要としているものを提供します。これは、一種の布施であると私は考えています。宗教上の布施は、在家が出家に無償で与えます。企業経営では、在家が在家に有償で提供します。この違いはありますが、人が必要としているものを提供するという点では同じです。 ここでも、人が幸せになるものを提供することが必須です。 私は、企業活動の本質は、布施であると考えています。
◆自利利他円満企業が人さまに必要とするものを提供して、代価を受け取りますと、売り上げが生じます。売り上げが生じたということは、企業が世間のお役に立ったことを意味します。 企業は売り上げが生じて喜び、人さまは必要なものを手に入れて喜びます。両方が共に喜ぶというところがポイントです。これを「自利利他円満」と言います。 大乗仏教の目指すものが、共に救われ、共に幸せになることであるとすれば、経済活動、経営活動が自利利他円満を目指すのは、大乗仏教の精神に通じるものがあります。近江商人の三方よし経営は、これを行なっていると言ってよいと思います。
◆利益の使い方売り上げから原価・経費を除いたあとに残るのが利益です。「シンガーラへの教え」というお経に、利益の使い方が、次のように説かれています。利益を四つに分けます。その一つを自分のために使います。その二つを経営に当てます。運転資金や資本になります。残りの一つを貯蓄して、いざというときのために備えます。 利益をこのように使いますと、経営を継続することができます。これは、自利利他円満の継続と見ることができます。
◆売り上げ・利益の意義以上を整理しますと、売り上げがあるということは、企業が世間のお役に立ったということです。利益があるということは、世間が経営を継続させてくれるということを意味します。ここに、売り上げと利益の意義を見ることができます。先ごろ、仏教経済学とか、仏教経営学とかが、しきりに提案されていますが、そこでも自利利他円満が重視されています。(浪 宏友)
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