[ビジネス縁起観からのメッセージ]      浪 宏友


 私は、浪 宏友事務所の社名で経営コンサルタントを営んでいます。しかし、実際には、経営コンサルタントではなくて、経営者コンサルタントです。

 私は、その経営者の愚痴話をとことん聞きます。それだけでも、その経営者の心の中は軽くなります。

 経営者の話を聞くときの私の胸の中には、お釈迦さまの教えがあります。原始仏典に説かれている四聖諦。妙法蓮華経に説かれている諸法実相十如是。私は心の奥で、久遠実成の本仏の慈悲と智慧を念じ続けています。

 経営者の話を聞きながら、私の心の中では、四聖諦と諸法実相十如是で分析整理し、この経営者をどう導けばよいかを考えます。

 経営者の抱えている問題・課題に応じて、経営者が理解できる範囲でアドバイスを行ない、実行できる範囲で、行なうべきことを示してあげます。行なうべきことは、八正道・六波羅蜜の中から、今、必要な内容を、この経営者が実践できるように噛み砕いたものです。
 経営者は、納得し、感動して、その通りに行なってみますと言ってお帰りになります。

 このとき、この経営者に薦めた実践内容は、それまで、この経営者が行なってこなかった内容になっています。この経営者は気付いていないと思いますが、いままで行なってこなかったことをやるということは、自分を変えることにほかなりません。

 しばらくして、この経営者から電話がかかってきます。どうしたらいいでしょう、と。
 私は、先日学んだことをやってみましたかと問います。すると、電話が切れます。
 この経営者は、いままで行なってこなかったことを行なうことができないのです。自分を変えることができないのです。それっきり、この経営者から連絡がくることはありません。

 このとき、「やろうとしたのですが、できませんでした」と答えてくだされば、お話しに応じて検討し、別の角度からアドバイスしてさし上げられるのですが、音沙汰なしになったのでは、何もしてあげられません。

 自分を変えて、経営を改善する経営者は稀です。そんな中に、長い間、私と共に学んでくださり、人格向上の道を、一歩一歩踏みしめてくだる方が、若干名いらっしゃいます。
 この方々は、確実に前進し、ものごとに対する対処の仕方が確実に向上していらっしゃいます。尊いことだと思います。(浪 宏友)