緑茶と紅茶と烏龍茶。みんな別々のものだと思っていました。別々のというのは、産地が別々であり、木の種類が別々であり、作り方が別々であり、要するにまったく関係のない別々のものだと思っていたのです。
ところがある日、この三つはおなじ茶の木から摘んだ葉で作るのだと聞かされて、びっくりしてしまいました。
まさかと思いながら資料を漁ってみると、なるほど、そうでした。茶の葉を採集してから手を加えるのですが、その方法の違いが、三つのお茶の違いを生み出していたのです。
茶の木はツバキの仲間なのだそうです。学吊はカメリア・シネンシスという種類で、インド、スリランカ、中国、日本で古くから栽培されているとか。緑茶・紅茶・烏龍茶それぞれに適した木があるようですが、大づかみには同じ種類だということでした。
では、緑茶・紅茶・烏龍茶は何が違うのかというと、茶葉を発酵させているかいないか、どの程度発酵させているかの違いだということでした。そんなこととは露知らずに、別物だと思い込んでいたのです。
発酵と言っても、お酒や味噌・醤油を作るときの発酵とは違うようです。お茶の葉の細胞のなかには、酸化酵素というものがあってこれを利用してお茶の葉の中の成分を酸化させるのだそうです。説明を読んだりもしてみたのですが、詳しいことは残念ながら理解しきれませんでした。
資料によると、お茶の葉を十分に発酵させたものが紅茶です。発酵させると赤くなるのです。
緑茶は、逆にまったく発酵させません。摘み取ったお茶の葉をすぐに加熱して、酸化酵素がはたらかないようにしてしまいます。このため、緑色のままになっています。
烏龍茶は、その中間と言っていいのでしょうか。発酵がある程度進んだところで加熱して発酵を止めてしまいます。どれくらい発酵させるかによって、さまざまな烏龍茶ができるとのことです。
でき上がった烏龍茶をさらに発酵させたもののひとつがプーアール茶でした。酸化酵素による発酵で烏龍茶にしたものを、今度は微生物で再発酵させるのだそうです。
同じお茶の葉からスタートしたものが、さまざまな工夫によって、さまざまな味覚に変化していくわけです。こうした製法を編み出した人々は、すごいなと感嘆するばかりです。
社団法人全国清涼飲料工業会発行の『清涼飲料の常識』によれば、緑茶は遣唐使たちによって中国から日本に伝えられたようです。一節によれば遣唐使は西暦600年代から800年代にかけて20回ぐらい派遣されました。この間に、当時の先進国であった唐から、さまざまな文化が日本にもたらされましたが、そのひとつが茶の種と喫茶法であったわけです。緑茶の歴史は古いんですね。
一方、紅茶が日本に輸入されたのは1906年(明治39年)といわれているそうで、これはまだまだ新しいと言ってよさそうです。
烏龍茶についてはいつ日本に入ってきたのかは分かりませんが「烏龍茶に代表される半発酵茶の第1次ブームは、1978年(昭和53年)に始まった《と同書にありますから、こちらはつい最近のできごとということになります。このときはリーフティーを主体に烏龍茶が日本に広がったのですがやがて下火となり、数年後に今度は缶入りの烏龍茶が売り出されました。これがきっかけとなって爆発的にひろがったようです。
友人たちと飲み屋さんに行くと、お酒を飲めない人が烏龍茶を注文しています。呑める人はお酒を烏龍茶で割っていたりします。ここでは緑茶や紅茶ではなくて、烏龍茶のほうがもててるんですね。
同じお茶の葉から、こんなにさまざまな文化が芽生え育ってきたなんて、実に面白いなあと感慨が湧いています。 (浪)
出典:清飲検協会報(平成22年11月号に掲載)
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