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![]() ここから、新たな物語が始まります。 オシリスの妻イシスは、呪術によって夫オシリスの種を受け息子ホルスをもうけました。 逞しく成長したホルスは、神々に向かて主張しました。 「自分こそ父オシリスの後を継ぎ、エジプト王になるべきである」 神々は、こぞって賛同しましたが、ただセトびいきの太陽神ラーだけは渋りました。 ホルスの母イシスは、オシリスの正当な後継ぎはホルスであるとラーに迫ります。イシスを持て余したラーは、神々に言いました。 「中の島に渡れ。そこで相談しよう」 ラーは、渡し守に、イシスだけは渡すなと言いつけました。これを知ったイシスは老婆に化け、渡し守に黄金の指輪をやって渡してもらいました。 中の島に渡ったイシスは、若い美しい女に身を変え、イチジクの木の下に立ちました。セトは、悲しそうに立つ女に声を掛け、訳を訊ねました。 女は、悲しげに話しました。 「私の夫は牛飼いで、彼との間に男の子がいます。夫は亡くなってしまいましたので、この子を跡取りにしようとしましたが、夫の弟がやってきて、家に住みつき、私たちを追い出そうとします」 これを聞いたセトは、大声で怒鳴りました。 「なんという弟だ。家は、お前の子供のものだ」 イシスは姿を現し、さらに鷹に姿を変えて木のいただきに止まり、言いました。 「セトよ、お前はお前自身を裁いたのだ」 自分で自分を裁いてしまったセトは、それでもホルスに王位を渡したくありません。 セトは、ホルスに言いました。お前と私とカバとなって水の中に入ろう。先に水から上がった者は、王位には就けない。ホルスは承諾し、二人はカバとなって水底に潜りました。 セトは、水底でホルスを倒そうと企んでいました。これを察したイシスは、大きな釣り針を水底に投げ入れました。ところが釣り針にかかったのはホルスでした。イシスは急いで釣り針をホルスから外し、もう一度水底に投げ入れました。今度は、間違いなく、セトに掛かりました。 釣り針に捕まったセトは、イシスに泣きつきました。セトは、イシスにとって弟です。つい力を緩めてしまいました。この隙にセトは逃げてしまいました。 ホルスは、母親のイシスに怒りをぶつけ、山に登ってイチジクの木の下に大の字になって怒っていました。 これを見つけたセトは、不意にホルスに襲い掛かり、両目をえぐり取って、山に埋めてしまったのです。 ホルスが両目を失って苦しんでいると、愛の女神ハトホルがやってきて、ホルスの目を治しました。 セトは、またもやホルスに闘いを挑みました。石の舟をつくって競争しようというのです。セトは水の中が得意ですから、ホルスを水底に沈めてやっつけようと思ったのです。 セトの悪だくみを見抜いたホルスは、杉の木で船を作り石膏で固めました。外見はまさしく石の舟でした。これを見たセトは、石で舟を作りました。 神々の前で舟に乗り込むと、セトの舟は沈み、ホルスの舟は沈みません。セトは強大なカバとなってホルスを襲い、ホルスは銛(もり)で闘ってセトを倒しました。 闘いが始まってから、80年の歳月が経っていました。(浪) |