詩誌「詩人散歩」(令和07年夏号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  ナウパカ              浪 宏友

少年と少女は恋をした
掟破りの恋だった
少年の家と少女の家は先祖代々反目していた

少年も 少女も
それぞれの家族に責められて家を出た
ただ ただ 逃れるために
二人は海岸を走った

たちまち追手に追いつかれた
少年は闘い 少女を逃がした
少女は後ろ髪を引かれながら山に逃げた
少年は 海岸で倒され 息絶えた

少女は逃げた
逃げて 逃げて 逃げた
だが 追いつかれた
それでも逃れようと走るうちに
急斜面から転がり落ちて
息絶えた

翌年
海岸と山に それぞれ 小さな花が開いた
どちらも はなびらが 半分しかなかった
本当は 合わさって
ひとつの花になるはずだった

  ひとひらの桜            中原道代

帰り道 少女はひとり
桜並木の小道を歩いた
風といっしょに桜が舞う 桜が舞う
きれいだなあ
桜吹雪に手を伸ばし素早くつかんだ
そっと開くと手の中に可愛い花びらひとつ
少女はその手をにぎりしめ 走りだす
はやく おばあちゃんに
見せたくて
話したくて
待っていたおばあちゃんの手の平に
ひとひらの桜 そっとのせて
「はい おみやげ」
「ありがとう」と言いながら
おばあちゃん
かたわらの小手帳に大事そうにはさんだ

  ありがとう             伊藤一路

今更感は拭えませんが
近頃は人にありがとうと言われる事に
自分の存在意義を感じるようになりました
もちろん仕事でもありがとうと
言われる事が大前提だけど
それ以外でもありがとうと言われるなら何でもしたい
家族も友達も僕に携わる全ての人を大切にしたい
残り後半の人生は
とにかく人も自分も大切に生きて行けたら
悔いが残らないのではないかと
感じている今日この頃です

  心ひとつに             大場 惑

夫婦喧嘩 親子喧嘩 兄弟喧嘩
職場の喧嘩 友達同士の喧嘩
近所付き合いの喧嘩
恋人同士の喧嘩
喧嘩はよくない
喧嘩に勝ったって偉くない

喧嘩はよそうよ
お腹の中の喧嘩の蟲はなだめておいて
何が気に入らないのか静かに話そうよ
怒鳴りまくったって分かってもらえない
静かに話した方が分かってもらえる
向うのことも分かってやろうよ
お互いに分かり合おうよ
人間同士だもの

ほんとうはみんな良い人なんだ
ほんのちょっとだけ我慢すれば
ほんのちょっとずつ譲り合えば
ほんのちょとだけ心を大きくすれば
仲良くやっていけると思うよ
そのほうがずっと幸せだと思うよ
お互いに思いやりあえるし
お互いに助けあえるし
そうすれば
心ひとつになって
お互いに信頼しあえるもの