罪 浪 宏友 |
暗い洞の奥から またも沸いてくるしわがれた声
負った罪を償い損ねて
身はそれぞれに
落ちる地面を見失ってしまった枯葉
数知れぬ罪にからまれて
またも沸いてくるしわがれた声
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空 浪 宏友 |
悲しみの底から空を見上げていたら あまりにも青くて深くて静寂で いつしか 空がそのまま悲しみになっていた
慌ただしく駆け抜けてきた時間
疲れ果てた身と心には
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穂高にて(佼成病院で共に働いた仲間との出逢い) 中原章予 |
お別れして何年になるのでせう 何ら変わることなく若々しく 昨日別れて今日逢ったみたいに そんな出逢い話しも何らこだわりなく 笑いそして涙して時の過ぎるのを知らず 自分の年も忘れてかたり明かす 三十年いや四十年ぶりの再会 何とすてきな友人達 そんな友を持つ自分は 何と幸せな自分 楽しいすばらしい三日間の穂高 又逢う日をかたくかたく約束し それぞれ自分の家に向う その心の中に残る温い温いぬくもり いつまでもいつまでも残る
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心のあかり 中原道代 |
子供みこしがこちらにやって来る 車のアクセルを少しゆるめる 今日は上田の祇園祭り はっぴ姿の子供達 ワッショイ ワッショイ 元気なかけ声がひびいてくる 得意気な顔がたのもしい
ここは私のふるさと
家の中は和らいで父も母もやさしかった
あの時からずっと私の心にあのあかりが住んでいる
子供みこしはどのあたりを練り歩いているだろう
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無題 山本恵子 |
久しぶりに日がさして 窓辺でちょっとねころんで 本を出して目にとまり 私の心を蘇らせた
苦労は宝だと父もいった
鉛筆片手につづる詩も
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愛猫 佐藤恵美 |
とうとう君は逝ってしまった。 部屋の空気も動かない。 君の死と一緒に 凍り付いてしまったみたいだ。 なのに、日常が押し寄せてくる。 君の死の上に薄っぺらな現在が 一枚、又、一枚と重なっていく。 こうやって君は 遠くにいってしまうのだろうか。 そうだ君のお気に入りだったあの出窓に 君の写真を飾ろう。 そして君に、今までどおり 僕の日常を語り続けよう。 毎日 毎日 メリー、メリー、メリー。 ああ、メリー お願いだ。 僕の傍らで もう一度だけ 君の寝息を聞かせてくれ。
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