遠ざかるきみ 浪 宏友 |
静かを装っていたけれど きみのなかは爆発していたんだね やさしく広がる牧草の下の 思いも寄らぬ深い地底に 灼熱のマグマがのたうっているように きみの奥にも煮えたぎった思いが波打っていたんだね
ぼくは そんなことは知らないから
ふと 振り返ったぼくの目に
あれからぼくはきみを探してさまよっている
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三寒四温 中原道代 |
雲から太陽が顔を出した 冷えた家々の壁を温めていく 凍える私の背中にも降り注ぐ 樋を伝う水の音が聞こえる 私はゆるゆると立ち上がった 背筋をそっと伸ばしてみる 体の内に暖かなものが込み上げた 優しい眼差しを自分に向けてみた 今の私 元気が出ない。 そのままを受け止める そこが私の出発点 笑顔のお裾分けができる私になりたい。 行きつ戻りつを繰り返し 明日の自分に繋げていこう
また小雪が舞っている
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ミスト 大戸恭子 |
オーラも無い。 パワーも無い。 どこかフレッシュな感じも少ない。 でもね、貴方からはミストが出ている。 やさしくて、濃やかで、傷つけないミスト。 浴びるだけで心も身体も リフレッシュされる様な、 いやなことがあっても リセットされる様な、 悪い事をしても メンテナンスされる様な。
そう、貴方の名はおじいさん、おばあさん。
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夕ぐれ 織田信雄 |
ある冬の日に コタツでみかん、うたたねしていると 新聞に阪神大震災被害者が 復興住宅の一室で 『ここは都会の墓場だ』 一年前に孤独死した八十歳の声である 夕方 よく晴れた空を見上げると 宵の明星がしだいにくっきりしてくる 今日も大過などなく 昨年の東北大震災を思う 急にボランティア活動を 検索する気になる
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さりし夜 山本恵子 |
光ちゃん他界し 長い年月 一人ぼっちでさみしかったね 父ちゃんも他界し 早七カ月 二人で逢えて話合いできたかしら
母ちゃん畠仕事時々通い
父ちゃんのおかげさま三人子供
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ロイヤルミルクティ 山本ルイ子 |
初めて飲んだとき 幸せの味がした 甘くて やさしくて ホッとする味
雪が一面 銀色に輝いていた
すると「キュッ キュッ」と遠くの方から聞こえてくる
それは 私の大好きなロイヤルミルクティだった
甘くて やさしく てホッとする味
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待つ事 伊藤一路 |
子供と居ると待つ事が多い 着替えが終わるのを待ったり 食事が終わるのを待ったり 何事もその気になるのを待ったり・・・ ただ待っているだけではないけれど 待つ事って大切な気がする どうしても大人の都合で急かしたい 気持ちになるけれど 待っている時間は 無駄ではなく大切な気がする じっくり待ってみよう これからも いろんな事が出来るようになるまで 目を離さずじっくりと
大人の人間関係も
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