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無限の光―友人の死を悼んで― 浪 宏友 |
これほどまでに 辛いのに 人は 何故 生き抜こうとするのか
これほどまでに 裏切られても
これほどまでに 挫折を繰り返しても
死の恐怖を前にしてたじろぐからか
人を失う悲しみに耐えきれないためか
独り取り残される寂しさに追い立てられてのことか
生きることへの疑問の裏側から
砕け散った愛の破片のひとつひとつから
疲れ果て傷だらけとなった身と心を
人は 生き
人は 愛し
人は また立ち上がる
やがて静かに瞑目するとき
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中年夫婦 山本恵子 |
雨にうたれて旅路を行けば 川の流れを横にみて 橋を渡れば信号だ
手に手をとりて車に注意
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恋の旅路 山本恵子 |
桜の花びらかぜに舞い 旅人迎えてありがとう 心安らぐ木々をみて 花びら片手に行く旅路
春のぬくもり半袖姿
花の散った軸のピンク色
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桜の頃とあなたと私 小田嶋紀江 |
あなたの逝きし桜の頃、またやってきました。九年の時が流れました。 あれから私は何かがかわったようですが、心の中は何もかも変わっていない気がしています。いたづらに“時”だけが流れ、肉体も心もおとろえていますが、私はあの時のまま止まっているようです。 夢も希望も失くしたようでいて、かえってそれに向かって歩いているようです。 あなたが追い求めていたように。 走って、歩いて、走って、歩いて、一からの出発点。生きていくことに疑問を感じてもあなたの詩(うた)が私の心をほどいてピュアにしてくれ ます。 あたり前の事があたり前のように過ぎていく、でもそれはとてもキセキに近いこと。 大事にしてゆきたい。 あなたが桜の樹の下で微笑んで手を振っていらっしゃるのが今、私には見えます。
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電話 小田嶋紀江 |
あなたの声が聞きたい夜 何でもいい、たわいのない話しでいい ずっと、ずっとあなたと話していたい 明日の仕事も忘れ、とりあえず“今”を大切にしたい。 こんなに無防備でいいのかと思うほど心を裸にして、砂時計の落ちるのを見ている。又、ひっくり返して一からスタート。 あなたの声が胸に響く。耳から躰の中へしっとり入っていくここちよさ。 切るのが恐いくらい。 切ったら又すぐかけたくなる。 そして、又そのYOINにひたる。 いつまでもずっとあなたと話していたい。 明日、会えなくても、あなたの声を耳にやきつけて、ずっと前に進んでゆきたい。 心の中でうずくこのとまどいにも似たこの気持ちをひとは「こひ」というのだろうか。 永すぎた時間はフリーズされているだろうか。
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