あんこ



白地に紺のかすりの着物
椿を染めぬいた手拭いを頭に
娘がひとり遠慮もなしに飛び込んできた
よくみれば
いたずらっこな少女の笑顔だ

あんこさんだよ
両袖をひろげてみせびらかす
今日は手伝いだよ あとでおいでよ
そのまま身をひるがえして行ってしまった

観光用だとちょっぴり馬鹿にしていたけれど
間近にみると女らしくて美しい
あんこ姿は女性の労働着なのだろう
島の女ははたらきものなのだろう
ピンクの前掛けには大島節の一節と
煙を吐いている三原山が染め抜かれていた

おみやげ屋には
さまざまな人々が渦巻いていた
あんこ姿の少女が甲斐甲斐しく
にぎやかな注文に応じていた

ほのぼのとしたものを感じながらも
遠い世界で立ちはたらく少女に
かすかなさびしさが胸をよぎって
岡田港の桟橋の
あんこ灯台まで歩いて行った

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