霧の三原山



長い髪を一束にまとめて
化粧もせずに運転している
つづれに登る御神火スカイライン
眼下に元町が一望になる
少し向こうに飛行場の滑走路が霞んでいる

三原山頂の御神火茶屋
おじさんが奥から迎えてくれる
ちょっと渋くて愛想がない
飾ってある写真はおじさんの作品だという

コーヒーを啜りながら霧の晴れるのを待っている
少女はおじさんと世間話をしていたが
今日は駄目だからまた来よう
不意にせっかちに私をうながし
コーヒー代を払って外に出る

大島登山道路から降りてくる
途中に温泉ホテルがあるんだよ
いいながら何処にも寄らずに通りすぎる
リス村なんて看板もあったけれど
島の人たちにはなんのこともないのだろう

また連れてってあげるよ
言い残して少女は出掛けてしまった
ひとり 部屋に立ち戻り
大の字になって手足を伸ばした

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