大島一周道路



少女は黙りこくって運転していた
昨日の晩から不機嫌なのだ
あしたの船で帰ろうかな
呟いたときから怒っているのだ

海は朝からしけていた
波が高くて船は欠航した
西風が強くて飛行機も飛ばないという
帰るなということよ
いいながら少女は勝手に走りだした
大島一周道路にはときおり雨が叩きつけていた

地層断面を通りすぎた
波浮の港を見下ろして走る
荒波に洗われる筆島を遠目に
大島公園もさっさと通りすぎて
泉津の椿トンネルを通過するころ
ようやくごきげんも直りはじめた

みんな東京に行くんだけど
問わず語りの少女の言葉は
家族のために島に埋もれるさびしさをひそかに覗かせている

やっぱりしばらく島にいるよ
ようやく笑顔を見せてくれた少女に
ほかのことばは見つからなかった

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