詩誌「詩人散歩」(平成12年秋号)
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 鋸Q宏友事務所日誌

長い立正佼成会職員を務めてきた私が、いよいよ今年の十二月に定年を迎えることになりました。 電気設備管理の業務から始まった職員生活は、教育者に関する研究所、学術に関する研究所を経て、舞台のディレクターや映像作品の制作の業務へと連なりました。                 もともと詩人としての道をライフワークとして歩み続けていましたから、多くの行事のためにさまざまなナレーション作品を提供して皆さんに喜ばれました。 この間に音楽家たちと知り合いになり作詞活動に入ってもいきました。 菊地良輔と結成し運営してきた市民サークル「夕焼けクラブ」では、劇団を作ったり、銀座の画廊で展覧会を開催したり、プロの音楽家たちのために本格的なコンサートを企画し実施したりしてきました。  庭野日敬師の法華経を高校生の頃から学びはじめ、信仰指導者として人々に教えを説きつづけているうちに“歩く法華経”と呼ばれるようになっていました。 こうして私はいつしかさまざまな知識や技術を身につけていました。いつしか多くの分野の多くの人々と親交を温めていました。気付いてみれば、私はかけがえのない多くの財産を手にしていたのです。これらの財産は金で売り買いできるものではありません。 私のみが持っている私独自の財産なのです。  これらの財産の特徴は、ただ持っているだけでは何の役にも立たないということです。人々のために役立ててこそ、価値を発揮できるというものばかりです。 私はこの多大な財産を人々の幸せに役立てようと思いました。日常生活は年金で賄える私です。しかし、人々の役に立つためにも結構費用がかかります。実業家の友人たちが言いました。永く続けるつもりだったらギャランティをもらいなさい、と。なるほどその通りだなと思った私は会社を設立することにしました。  「有限会社浪宏友事務所」という名称で、既に登記も完了しました。二〇〇一年一月一日、すなわち二十一世紀の始まりの日を開業日にしようとしています。 どのような業態の会社になるのか、どのような性格の会社になるのか、今のところ見当もつきません。それでもいままで通りにしていれば、周囲の方々がいいように引き回してくださる筈だと信じています。  無計画の計画。我が師庭野日敬師がよく使っていたこの言葉を、今度は私が使わせていただこうと思います。                 (浪 宏友)