詩誌「詩人散歩」(平成12年秋号)
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 錆びた愛               浪 宏友
   

知らないあいだに
私はあの人のものになっていました
もう 逃げられない
もう 離れられない
私にはあの人が染みついていて
どこにいても
どんなときでも
私の中からあの人が動きだすのでした

知らないあいだに
あの人は私から離れていこうとしていました
でも 離れることは出来ない
でも 心ならずも がっている
私にはあの人が染みついているから
引きずられていく
囚われていく
私はあの人に向かって彷徨い続けるのでした

知らないあいだに
あの人は私のすべてになっていました
ほかのものはいらない
ほかのときもいらない
私に染みついているあの人のために
すべてを捨てて
生命さえ捨てて
私はあの人に堕ちて行くしかありませんでした
   

帰って来たときには
君はとっくに何処かへ行ってしまっていた
あまりにも遅かったから
あまりにも遠かったから

噂話によれば
君はとても幸せとはいえないありさまだった
何処にいるのかも分からない
誰といるのかも分からない

尋ね歩きたいけれど
君の変わり果てた姿に出会うのが怖い
もう どうにもならないのであれば
もう 手が届かないのであれば

再び旅に出るぼくに
君に代わる人を見つけることはできない
たったひとりの君だったのに
たった一度の愛だったのに

何処かで客死するとき
君の面影だけをを思い出しているだろう
幸せに息を引き取りたいから
静かに瞼を閉じたいから

 母                    小田嶋紀江
いつも私を支えてくれるあなた。
やさしい心と励ましをありがとう。
私をこの世に誕生させてくれて、ありがとう。
私の命を何度も何度も救ってくれてありがとう。
それでもモラトリアムの私は未だに反抗してばかり……。
心配かけてごめんね。
あなたの後姿、小さくなったね。
その白髪は私のせいなんだね。
甘えてばかりでごめんね。
いつの日かあなたを支える事の出来るようになりたい。
あなたの存在は私の中で一番大きい。
いつまでもいつまでもあなたと共に生きていきたい。
ありがとう、お母さん。
心から感謝しています。

 ひまわりの呟き           小田嶋紀江
生きぬくということ
大切なのはそこ
どんなに苦しくても、辛くても、
とことん汗かいて、涙して生き抜くこと
周りの愛に支えられ、生かされている
朝の光のように、未来は輝いているはず
今、少し弱音をはいても、
はいつくばってどんどん前へ進もう
“愛”が私をつき動かす
“夢”が心を走らせる
焦燥感、苛立ち、不安、全てけとばして
生きる、生きぬく、生かされている
流れの中に身を任せ、真実へ向かおう
明日は、明日こそは……と願いをこめて
“ありがとう”と素直に言えるように
“生”にどん欲になろう
さあ、進め、進んでいこう
見守ってくださる大きな力を感じている