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[経営コンサルタントとして学ぶお釈迦さまの教え]−シンガーラへの教え4  浪 宏友


人間関係の教え

 「シンガーラへの教え」というお経は、日常生活の人間関係における自分のありかたを説いた教えです。毎日、共に暮らす人々との間に、善い人間関係を結び育てるには、自分はどうあればよいかということを説いた教えであると言っていいでしょう。
 善い人間関係は、幸せの源泉です。善い人間関係を結び育てるのは、幸福になることであると言っていいと思います。

十四の罪悪と人間関係

 「シンガーラへの教え」は「十四の罪悪から離れる」という教えから始まります。
 十四の罪悪とは、
 「四つの行為の汚れ」
 「四つのしかたで悪い行為をなす」
 「財を散ずる六つの門戸」
です。
 お釈迦さまは、シンガーラに、十四の罪悪から離れなさいと、こんこんとお説きになりました。
 自分を振り返って、こういうところがあったら改めなさい。こういうところがないのなら、この先も行なってはなりません。お釈迦さまは、シンガーラに、そうおっしゃったと思います。
 この「十四の罪悪から離れなさい」という教えが、「シンガーラへの教え」というお経の中心だと思います。
十四の罪悪  十四の罪悪を、概観しておきたいと思います。
 四つの行為の汚れとは、「生きものを殺すこと、与えられないものを取ること、欲望(性的な欲望)に関する邪な行ない、虚言」です。これらは人間として、決して行なってはならない四つの行ないです。
 「四つのしかたで悪い行為をなす」の、「四つのしかた」とは「貪欲(肥大化した自分本位の欲望)、怒り、迷い(智慧の無いこと)、恐怖(将来に対する不安)」です。自分の中にこれらがあると、悪い行ないをしてしまうので捨てる必要があるのです。
 「財を散ずる六つの門戸」には、財を得るための仕事をしないで、財を無駄に使うことが描かれています。こんなことを繰り返していれば、まともな生活を営むことなど出来なくなってしまうでしょう。
 お釈迦さまは、シンガーラに、こうした十四の罪悪から離れなさいと教えました。
 もしも、自分が、十四の罪悪を行なっていたら、いかなる人とも、善い人間関係を結ぶことはできません。十四の罪悪をやめることによって、幸福な人生に向かうことができるのです。
 十四の罪悪から離れなさいという教えは人間関係とは関係がないように見えますがそうではありません。
 あなたは、十四の罪悪を行なっている人と、親しくなりたいとお思いでしょうか。
「否!」だと思います。  十四の罪悪を行なっていない人なら、親しくなってもいいと、お思いになるのではないでしょうか。
 十四の罪悪を行なっていない人が、善い人間関係を結び育てることのできる人なのです。
 善い人間関係を結び育てる基盤を自分の中に確立するために、お釈迦さまは、シンガーラに、この教えをお説きになったのだと、私は考えています。

諸行無常・諸法無我ワールド

 仏教に、諸行無常・諸法無我・涅槃寂静という教えがあります。
 この世界は、諸行無常・諸法無我という真理でできているいわば諸行無常・諸法無我ワールドです。
 諸行無常は「あらゆるものは変化する」という真理です。
 諸法無我は「あらゆるものは他のものと関係し合っている」という真理です。
 ここで真理とは「あらゆるものがそうなっている」ということです。例外はないということです。
 二つの真理は、あらゆるものは他のものと関係しながら変化するという一つの真理です。この真理は、縁起の法と呼ばれています。
 諸行無常は、あらゆるものは変化するという真理ですが、この真理は、生成発展という方向性を持っています。
 諸法無我は、あらゆるものは他のものと関係して存在しているという真理ですが、この真理は、調和という方向性をもっています。
 ものごとは、関係しながら変化するのですが、このとき、調和しよう、発展しようとしているのです。
 この方向性は、人間関係にもはたらいていて、人は他の人との関係の中で、調和したい、発展したいという方向性を持っているのです。
 この方向性を破るのが、貪欲・瞋恚・愚痴などの、自分本位の煩悩ですが、この話は後に回したいと思います。
 涅槃寂静という教えは、いわば、幸福になりましょうという教えです。
「涅槃」は「迷いを滅し、悩み苦しみをすっかり滅しましょう」、「寂静」は「心安らかに、生き生きと人生を営んでいきましょう」と、私たちに呼びかけているのだと思います。諸行無常・諸法無我ワールドの方向性にあった行ないを続ければ、そうなれるのです。

善い人間関係

人間は、諸行無常・諸法無我ワールドで生きています。善い人間関係とは、互いに調和し、発展する関係であると言えます。自分も幸せになり、相手も幸せになる関係といえばいいでしょう。
 諸行無常・諸法無我ワールドでは、調和の中から発展が生じます。発展するとは、より高度な調和を生み出すことです。
 人と人との関係が調和していますと、そこから発展が生じて、より高度な調和が生まれるということになります。
 このような関係が自分と相手との善い関係と言えるのではないでしょうか。

人間関係を乱すもの

 お釈迦さまが、十四の罪悪から離れなさいとおっしゃるのは、これらの罪悪が、人間関係を乱すからにほかなりません。
 人間関係を乱せば、人と人との間の調和が無くなります。調和を欠いた人間関係からは、幸福は生まれません。
 善い人間関係を望むのであれば、まず自分が、善い人間関係を結べる人間になる必要があります。このお経は、そのことを、深く みしめているのです。